中村宏 戦争記憶絵図

NAKAMURA Hiroshi
2023年5月16日(火)−6月3日(土)
12:00-19:00 日曜休廊・土曜日は17:00まで

《空襲 1945》
アクリル、キャンバス
65.2×53.0cm 3枚組
2022年

1945年、基地や軍需工場が集中していたために甚大な被害を受けた浜松で、中村宏は敗戦を迎えます。当時12歳だった中村は、毎日のように繰り返される爆撃の恐怖に晒され、浜松大空襲で赤く炎上する街をただ震えながら見ていたと言います。中村の戦争体験は、武装して戦場で闘う兵士とは違い、ただ逃げることしかできない、命を守る戦いでした。
中村は戦後ルポルタージュ絵画の第一人者として、絵画表現を通して社会と向き合い、砂川基地闘争の現場を描いた「砂川五番」や、太平洋戦争末期の沖縄戦の悲劇を主題にした「島」、ジラード事件を告発した「基地」などを1950年代に発表してきましたが、これまで自身の戦争体験を描いたことはありませんでした。
敗戦から78年のいま、中村少年が目撃した戦争をルポルタージュ絵画として描き、世に問いかけます。本展では新作「空襲 1945」「機銃掃射 1945」「艦砲射撃 1945」と空襲の記憶を描いたドローイングを発表します。

中村は女学校創始者の家に生まれ、その敷地に育ったので、セーラー服の女学生は日常の光景でした。中村は長年にわたって、冷たく暗い表情をしたセーラー服の少女たちを描いてきました。その理由についてこれまであまり語ってきませんでしたが、このたびの個展を目前にして「戦時下に軍需工場で働く女学生や空襲で逃げる子供たちの、恐怖や絶望、怒りの表情が滲み出てきてしまう」と語っています。中村の作品には、どこか暗く不穏な気配が漂っていますが、その根底には戦争体験が潜んでいます。90歳を迎え、今なお絵画の可能性を追求し続ける中村の新作をぜひご高覧ください。

中村宏は1932年静岡県生まれ。1951年日本大学芸術学部美術学科入学。1950年代、社会的事件を題材にした「ルポルタージュ絵画」を代表する一人として注目を集めます。自らを「絵画者」と名乗り、「モンタージュ絵画」「観念絵画」など、独自の方法論によってタブローを理論化し、新たな絵画表現を切り拓いてきました。主な展覧会に、2007年「中村宏|図画事件1953-2007」(東京都現代美術館、名古屋市美術館)、2010年「タブロオ・マシン〔図画機械〕-中村宏の絵画と模型」(練馬区立美術館)、2015年「絵画者中村宏展」(浜松市美術館)ほか。

《艦砲射撃1945》
アクリル、キャンバス
65.2×53.0cm 3枚組
2023年
《機銃掃射1945》
アクリル、キャンバス
53.0×65.2cm 3枚組
2022年
《空襲》
アクリル、紙
22×22cm
2022年
左より《艦砲射撃 1945》《空襲 1945》《機銃掃射 1945》
左《戦下の顔》…《4分の1について》(2020年)を改題して、戦争画として展示
ドローイング《空襲の記憶-艦載機》《空襲の記憶-校舎》《火事と少女》《空襲の記憶-爆弾》《少女4分の1》


「中村宏 戦争記憶絵図」記録動画



中村宏 プロフィール
1932年静岡県浜松市生まれ。日本大学芸術学部美術学科に学ぶ。

ギャラリー58での展覧会
[個展]
2011年 「中村宏 1960-80年代」
2013年 「消失点・中村宏」
2015年 「一点消失・中村宏」
2018年 「中村宏 質感と角度」
2020年 「中村宏 4分の1について」
[グループ展]
2010年 「前衛★R70展 -70歳未満出品不可・完全最新作-」
2012年 「自画像★2012 -9人の美術家による新作自画像と小品展-」
2014~2023年 「Square展 [30×30cmの正方形展]」

主な展覧会
1953年 「第1回ニッポン展」東京都美術館 以後第7回展まで出品
1954年 「第7回日本アンデパンダン展」東京都美術館 以後第14回展まで出品
1960年 「超現実絵画の展開」東京国立近代美術館
1970年 「第1回齣展」東京都美術館 以後現在まで毎年出品
1974年 「日本-伝統と現代 〔Japan:Tradition und Gegenwart〕」デュッセルドルフ市立美術館、ドイツ
1981年 「現代美術の動向Ⅰ・1950年代-その暗黒と光芒」東京都美術館
1985年 「再構成・日本の前衛芸術 1945-65」オックスフォード近代美術館、イギリス ほか
1986年 「前衛芸術の日本 1910-70 [Japon des Avant Gardes 1910-70] 」ポンピドゥ・センター、パリ
1988年 「日本のルポルタージュ・アート-絵描きがとらえたシャッター・チャンス」板橋区立美術館
1991年 「芸術と日常-反芸術/汎芸術」国立国際美術館
1997年 「ねりまの美術 ’97 池田龍雄・中村宏」練馬区立美術館
1998年 「戦後日本のリアリズム 1945-1960」名古屋市美術館
2002年 「20世紀。美術は虚像を認知した」平塚市美術館
2007年 「中村宏|図画事件 1953-2007」東京都現代美術館/名古屋市美術館
2010年 「タブロオ・マシン [図画機械] 中村宏の絵画と模型」練馬区立美術館
2012年 「美術にぶるっ SECTION2 実験場 1950s」 東京国立近代美術館
2012年 「TOKYO 1955-1970 A NEW AVANT GARDE」ニューヨーク近代美術館
2013年 「六本木クロッシング2013 アウト・オブ・ダウト展」森美術館
2014年 「われわれは<リアル>である 1920-1950s」武蔵野市立吉祥寺美術館
2015年 「絵画者 中村宏」浜松市美術館
2016年 「美術は語られる-評論家・中原佑介の眼-」DIC川村記念美術館
2017年 「絵画は告発する/特別展示 板橋の日本画」板橋区立美術館
2018年 「アジアにめざめたら:アートが変わる、世界が変わる1960-1990年代」東京国立近代美術館
2019年 「百年の編み手たち」東京都現代美術館
2020年 「パラレルヒストリーズ 現代アートの諸潮流」静岡県立美術館
2021年 「絵を描く、絵に描く、画家たちのキセキ 8つの意思」練馬区立美術館
2022年 「鉄道と美術の150年」東京ステーションギャラリー

主な作品集・著書
『中村宏○画集 望遠鏡からの告示』現代思潮社、1968年
『機械学宣言 地を匍う飛行機と飛行する蒸気機關車』(稲垣足穂との共著)仮面社、1970年
『機甲本イカルス』(稲垣足穂との共著)呪物研究所、1973年
『呪物記』大和書房、1973年
『中村宏作品集★車窓篇』深夜叢書社、1980年
『中村宏画集 1953-1994 タブロオ機械』美術出版社、1995年
『図画蜂起 1955-2000』美術出版社、2000年
『絵画者 1957-2002』美術出版社、2003年
『応答せよ!絵画者 中村宏インタビュー』白順社、2021年

パブリック・コレクション
東京国立近代美術館、国立国際美術館、東京都現代美術館、練馬区立美術館、板橋区立美術館、静岡県立美術館、浜松市美術館、宮城県美術館、栃木県立美術館、徳島県立近代美術館、愛知県美術館、名古屋市美術館、高松市美術館、横浜美術館、刈谷市美術館、千葉市美術館、いわき市立美術館、青森県立美術館、郡山市立美術館、豊橋市美術博物館、うらわ美術館、東京ステーションギャラリー ほか

静岡新聞朝刊 2023年5月16日(火)
https://www.at-s.com/sp/news/article/shizuoka/1240696.html

読売新聞夕刊 2023年5月20日(土)

朝日新聞朝刊 2023年5月25日(木)
https://www.asahi.com/sp/articles/ASR5S6GCJR5KULZU00N.html

日経新聞夕刊 2023年5月27日(土)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO71390960X20C23A5BE0P00/

毎日新聞夕刊 2023年5月29日(月)
https://mainichi.jp/articles/20230529/dde/012/040/003000c

共同通信 2023年5月30日(火) 福住廉展評

共同通信 2023年5月31日(水)

アートスケープ 2023年7月1日号
https://artscape.jp/report/review/10185824_1735.html

浜松学芸中学校・高等学校 紹介ページ
https://www.gakugei.ed.jp/topics/detail/2490


Tokyo Art Beat
中村宏 インタビュー「“展示する”ということは芸術行為として非常に重要」
“Why Art?” Hiroshi Nakamura Interview – YouTube

2020年の個展
2018年の個展
2015年の個展
2013年の個展
2011年の個展
2010年 前衛★R70
2012年 自画像★2012