稲葉 寛乃  Hirono Inaba

   2009.5.11(Mon)-5.16(Sat)



    2008年の個展
    2007年の個展

    



「見分けのつかないただの一日」(部分)
180cm×500cm   ポリエステル・アクリル・ポリ塩化ビニール

フィルターのように薄く透ける布を何層にも重ねた、視覚に揺さぶりをかけるインスタレーション。
つかみどころのない奥行きと、じっと見つめていても焦点が合いそうで合わないもどかしさを
感じさせる画面の奥に、都会の雑踏を行きかう人々とそこに潜む何かが浮かび上がってくる。


【作家コメント】
今回の作品は、メッシュ加工された布を重ねたインスタレーションです。
フィルターのような透過性のある布を重ねることで、
不思議な奥行きと、対象がぶれてぼやける効果を出しています。

このような素材を使用したのは、まるでテレビを見ているかのように、
どこか知らない世界で事件が起きているような現実感のずれを表出しようと考えたからです。
それは昨年6月に起きた、秋葉原の無差別殺傷事件がきっかけです。
この報道がなされた際に気づいたのは、事件が起きている一方で、道路の向こう側では
何事もなくいつもどおりに通勤していく人々の世界があったことでした。
それは同じ空間にまるで交じり合うことのない、
二つの世界が存在していることをはっきり示していました。

それからは、プライベートな空間から職場などのセミパブリックな空間、
人々の集まる公共空間と、それぞれ違う空間を行き来する人々に関心がいくようになりました。

視点を交差させ、しっかり見ようとした端からズレてぼやけていく像は、
ある目的のもとに集まったり離れたりしていく私たちの姿と重なります。

人々がばらばらになり、親密性を喪失したようにみえる都市空間で、
それでも何かしら交差して繋がっていくものに期待して、私は制作を続けています。



【プロフィール】
1983年 福井県生まれ
2006年 福井大学教育地域科学部美術教育サブコース卒業
2008年 福井大学大学院修了


2005年 第19回市美展ふくい入賞(福井市美術館)

2006年 2006年あさご芸術の森大賞展入選(あさご芸術の森美術館)
2007年 
個展 ギャラリー58
      トーキョーワンダーウォール2007選出
      第2回福井大学美術科在学生・OB・OG有志展(福井県立美術館)
2008年 個展 ギャラリー58

2009年 第3回福井大学美術科在学生・OB・OG有志展(福井県立美術館)










福井新聞 掲載記事