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「半眼」 キャンバス・油彩 1816×2273mm |
【作家コメント】
- 黒子の住む森 -
白い箱の中で緊張感が漂っていた。
静かに居る。白い手で右目を翳しこちらを見ている黒子が、居る。
小さな木の実を一口だけ噛み、汁を零しながら藁に耳を当て微かな音を聞く。
灰色の髪をした黒子は全てを見渡し深呼吸をした。
さぁ、始めよう。
一つ。血相を変えたでかい繭。僕に寄い添ってくる。冷たく白い光を帯びた繭は、
頭の上から垂れてくる。濡れながら体内の水分を取りながら、足まで降りてくる。
その瞬間、白い箱が縮小し、足先から湿った藁がこぼれだす。
二つ。礼拝堂の前で薔薇を被る女。
陽気なダンスに身を委ね、陽気な今宵に身を委ね。
お箸を少しだけおかじりながら。
三つ。薔薇を被るカノジョの声。彼女は口を動かし声は出さずにこう言った。
「KOBINOJAPAN」。
そして小刻みに足を揺らし、親指を藁で覆い隠した。内緒の話。
単純に、大地に足を立て、両手で空を掴むべきではないか。
何故か。
藁はこぼれ落ち、空は大きな悲しみの音をたて、僕の身体へと怒りを持って入ってきた。
魂だけの場所。
あぁ、悲しい。
羽衣の誕生である。
そして僕は結局何もなかったかのように、ゆっくりと手で目を覆い隠す。
僕は目が大事なのだ。
終りの時間-A
ゆっくりした時間の中で、白い箱の隅で赤い木が熟した。
熟す流れと共に、灰色もバーミリオンも流れへと。礼拝堂へと。鳥居へと。多摩境へ、と。徒然たる。
全てが終わった-B。
静かな森の中で、黒子がしゃがんでいるのが微かに見えた。
あれが、現実か、いやはや。
黒子の住む森、想像たれ。
【プロフィール】
1984年 福岡県生まれ
2007年 大阪芸術大学美術学科油画コース卒業
2009年 多摩美術大学大学院美術研究科修了
<個展>
2009年 ギャラリー58(東京)
<グループ展>
2008年 「第28回 史水展」 SPAZIO BRERA GINZA(東京)
「Art & Design 国際講評会」 清華大学美術学院(北京)
2010年 「ペインター4人展 Four painters Exhibition『 感じる世界、紡ぎだす物語
』」 GALLERY M(愛知)
<受賞>
2008年 第44回神奈川県美術展 特選受賞(神奈川県民ホールギャラリー・厚木市文化会館/神奈川)
2009年 第6回はるひ絵画トリエンナーレ 優秀賞受賞(はるひ美術館/愛知)